カサス王の憂鬱はなお続いていた。

ひと月前の夢魔との出会い、そして死の宣告。
国にはびこる我が命を狙おうとするあらゆる不安要素は、全て排除してきた筈だった。

たった一つを除いては･･･

王都リルガミンの外れにある灰暗き洞窟。
人はそれを皮肉を込めて 「夢の道」 と呼ぶ。
伝説によれば、その奥には夢魔が住むという。

未だ誰一人としてその最深部より帰らぬ洞窟。
そこには手付かずの財宝が眠るとも偉大な英知が眠るともされている。

夢と煩悩を抱いた数多き冒険者や兵士がその道を片道だけ通って行った。


　　　「見事夢の道を制圧し、夢魔を討ち取ったる者あれば
　　　　　　　　　　　　　抱えきれぬ財と名誉をくれてやろう！我の前に忌まわしき首を差し出せ！」


今宵も暗き洞窟は夢を喰い続ける･･･